森田療法について

当院では森田療法を通常の保険診療のなかで取り入れております。

入院して集中的に行う森田療法(入院森田療法)とは異なり、日常生活を送りながら外来に通っていただく形になります。一回の診療でお話しできる時間はかぎられていますが、そのなかで日々の生活のしかたや気持ちの持ちようについて一緒に考え、少しずつ取り組んでいきます。

当院で森田療法を担当する松本裕史医師は、日本森田療法学会認定医を取得しており、学会発表や論文執筆などを通して研鑽を積んでおります。また、日本森田療法学会が実施している外来森田療法の治療効果研究(8)にも研究メンバーとして参加しております。さらに、日本森田療法学会の理事を務めるなど森田療法の学会活動にも積極的に参画しております。

森田療法とは

森田療法は、精神科医の森田正馬によって1920年頃に始められた精神療法です。日本で生まれ、日本で独自に発展してきた治療法です(1)。

森田療法の特徴は、不安や恐怖を排除するのではなく「受け入れること」で、症状を発展・固着させるメカニズムから脱出するという点、また、自分の中にある健康な力や自然治癒力を最大限に生かしていくという点にあります(2)。

お薬を使わない治療

森田療法は、お薬を使わずに行う治療です。精神科のお薬に抵抗のある方でも、受けていただくことができます。

ただし、症状が強いときなどは、患者さんとご相談のうえで、お薬を併用することもできます。

森田療法の対象となる症状・状態

森田療法は、次のようなさまざまな症状・状態に用いることができます(5を改変)。ご自身に当てはまるかどうか、詳しくは担当医にお尋ねください。

  • 広場恐怖症、パニック症 … 突然の動悸や息苦しさ(パニック発作)におそわれたり、「逃げられない場所」(電車・人混みなど)を避けるようになったりするものです。
  • 社交不安症 … 人前で話す、注目されるといった場面で強い緊張や不安を感じ、そうした場面を避けてしまうものです。
  • 対人恐怖症 … 人と接する場面で、自分の視線・赤面・表情などが相手に不快感を与えるのではないかと気にしてしまうものです。日本で古くから知られてきた状態です。
  • 全般性不安症 … 特定のことだけでなく、さまざまな出来事について過度に心配し、その状態が続くものです。
  • 強迫症 … 手洗いや確認などを「やめたいのにやめられない」かたちで繰り返してしまうものです。
  • 身体症状症・慢性疼痛 … 痛みや体の不調が続き、それにとらわれることで、不安や生活への支障がさらに強まってしまうものです。
  • うつ病 … 気分の落ち込みや、これまで楽しめていたことへの興味の低下が続くものです。
  • 適応障害 … 環境の変化やストレスをきっかけに、気分や行動に不調があらわれるものです。
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD) … つらい体験のあと、その記憶がくり返しよみがえるなどして、不安や緊張が続くものです。
  • 過敏性腸症候群 … 検査では異常が見つからないのに、腹痛や下痢・便秘などをくり返すものです。
  • 身体の病気(がんなど)をお持ちの方の不安 … 病気そのものではなく、それにともなう不安や気持ちのつらさをやわらげる目的で用います。

認知行動療法との関係

現在、精神療法の主流となっているのが認知行動療法です。認知行動療法の主な目標は、不安やうつといった症状をやわらげることにあります。

森田療法では、不安を「あるがまま」に受け入れながら、よりよく生きようとする気持ちを建設的な行動という形で発揮し、「自分らしい生き方を実現すること」を目指します(2を改変)。森田療法でももちろん症状の軽減は期待できますが、それだけにとどまりません。もともとの性格を無理に変えようとするのではなく、その持ち味を実生活のなかで生かしていけるようになること(性格の陶冶)も、治療の目標に含まれています(3)(4)。症状をやわらげるだけでなく、生き方そのものを見つめ直す視点を提供している、と言えます。こうした特徴から、森田療法は、認知行動療法とはまた違った形で、患者さんのより深い回復に役立つ可能性があるとも考えられます。

なお、より新しい「第3世代」と呼ばれる認知行動療法、たとえばマインドフルネス認知療法(mindfulness-based cognitive therapy)やアクセプタンス&コミットメント・セラピー(acceptance and commitment therapy)については、森田療法との共通点が指摘されています(6)(7)。

森田療法という名前からは古くさい印象を持たれるかもしれません。しかし、近年注目されているマインドフルネスなどの新しい世代の認知行動療法と共通する特徴もあり、古くからその発想に至っていたという点では、むしろ先駆的な治療法と言えます。

治療効果・エビデンスについて

現在、日本森田療法学会により、外来森田療法の治療効果を客観的に検証するための研究が行われています(8)。

参考文献
  1. Morita, S. Morita therapy and the true nature of anxiety-based disorders (shinkeishitsu). Kondo A, translator; LeVine P, 編. Albany, NY, US: State University of New York Press; 1998.
  2. 東京慈恵会医科大学 森田療法センター. 森田療法とは. https://www.jikei.ac.jp/hospital/west-medical-center/latest_morita.html(2026/06/04 閲覧)
  3. 中村 敬, 編. 森田療法. 中山書店; 1999. p.117–34.(岩崎 徹也, 小出 浩之, 松下 正明, 浅井 昌弘, 牛島 定信, 倉知 正佳, 小山 司, 中根 允文, 三好 功峰, 編; vol. 15)
  4. 黒木 俊秀, 編. 入院森田療法 I(森田療法原法の実際). ミネルヴァ書房; 2005. p.72–87.
  5. 中村 敬, 北西 憲二, 丸山 晋, 石山 一舟, 伊藤 克人, 立松 一徳, 黒木 俊秀, 久保田 幹子, 橋本 和幸, 市川 光洋. 外来森田療法のガイドライン. 日森田療会誌. 2009;20:91–103.
  6. 中村 敬. 森田療法と認知療法の対話 認知行動療法の新しい流れと森田学派の立場. 日森田療会誌. 2007;18(1):45–50.
  7. Hofmann SG. Acceptance and commitment therapy: New wave or morita therapy? Clinical Psychology: Science and Practice. 2008;15(4):280–5. https://doi.org/10.1111/j.1468-2850.2008.00138.x
  8. 日本森田療法学会. 「外来森田療法の治療効果研究」実施のお知らせ. https://www.jps-morita.jp/pdf/research_on_therapy.pdf(2026/06/04 閲覧)